ことばとうたと。

Pax mundi per linguas et musica.

なぜBTSはアメリカのファンを獲得したか(2)

 前回記事からの続きです。

utakotonoha.hatenablog.com

 

3.アメリカにおけるboy bandへの需要

 アメリカでは今、人気のボーイ・バンド(いわゆる男性アイドルグループ)が不在で、そこの穴にすっぽりハマった、という点。

 確かに、2016年のOne Directionの活動中止以来、これといった欧米のアイドル・グループは見当たりません。世の女性が、愛でる対象となるボーイ・バンドを求めていて、そこにK-popが入ってきて、そしてBTSが現れた、と。

 実は、今から10年ほど前に、本国韓国では大人気で、そして少なくとも東南アジア方面ではかなりの知名度があったRainというソロのアイドル歌手が、アメリカに進出しました。ダンスがめちゃめちゃ上手く、ステージには定評のあった彼。本国では「興行的に成功」みたいな感じで捉えられたようですが、当時アメリカのサイトを読んでいた限り、アメリカでは好意的に受け止める記事はほとんどありませんでした。アメリカの聴衆を満足させるものではない・・・みたいな。「へ~・・・厳しいな」と思った記憶があります。でもそれもそのはず、当時はN’syncからソロになったJustin Timberlakeや98degreesからソロになったNick Lacheyなど、ソロ・アイドル歌手が大活躍していた時期でしたから、外国人アイドル歌手なぞ余計に厳しい目で見られていたのは当然の事だったかもしれません。

 でも今は、幸いにも競合するアイドル・グループがアメリカにいない。そして、グローバリゼーション(笑)の中で、愛でるアイドルは別に英語を話さなくてもいい、かわいくてかっこよくて、そしてreality とauthenticityがあればなおよし、という風に嗜好が変わった・・・これって本当に大きな時代の流れの変化だなあと思います。まあ、あくまで「外国人枠」の話ではありますが。

 

4.Rap Monster(RM)の英語力

 英語で直接コミュニケーションできるという点。 

 RMはグループのリーダーですが、彼は英語が上手。彼がいるから、海外でも通訳がついているところをまず見たことがありません。RMほどではないにせよ、他のメンバーも臆せず返答する度胸を持ってますし、みんな英語の勉強も頑張っているようです。

 RMはステージ上のみならず、ネット放送でも度々英語でメッセージを伝えていますが、好きなアイドルの言葉を翻訳を頼らず受け取ることができる、というのが、海外のファンが親近感を得られる決して小さくない要素のようです。

 アメリカのテレビ番組出演が決まったのも、やはりこの部分が大きいように思います。RMの英語力と、Jinくんの「I am world-wide handsome!」という鉄板せりふがないと成り立ちません(笑)。例えば、司会に「じゃあちょっと踊ってみせてよ」とか振られるとする。そこで、RMがここぞとばかりにおちゃらけた踊りを見せて笑いをとった後、J-Hopeがキレキレのダンスをきめて喝采を浴びる・・・。そんな流れがあるんじゃないでしょうかね(勝手に妄想)。あと彼ら、Sesame StreetとかSponge Bobの物まねも、持ちネタとして持っていましたよね。たとえ言葉がつなげなくても、芸でしのげる、そして体を張って笑いを取りにいかれるという強み(芸人か)、番組にキャスティングした人は、そういうとこ絶対見てると思います。

 

 さて、ここからは、私の個人的な考えになりますが。 

5.満足度の高いパフォーマンス

 意外にも、ここにはあまり触れた記事がなかったのですが、彼らのパフォーマンスの質。

 まあ、アメリカではアーティストがステージで質の高いパフォーマンスを見せるのは当たり前の事なので、あえて特別に触れられていないだけなのかもしれませんが。BTSって、ステージパフォを見た後、「あーいいもの見た(スッキリ)」。という感覚があるんですよね。もちろん他のK-popアイドルでもあるのですが、最近ではBTSが、私にそんな感覚を与えてくれます。

 そういう意味で、ビヨンセとかすごい。なんかこう、鬼気迫ってくるものがあるんですよね。ああいうものを、米本国の人達は求めてやまないのでしょう。歌がうまいだけでも、顔がいいだけでも、ダンスができるだけでもダメ。パッケージとしての実力がものを言う世界で、見ている人を心から楽しませることができるグループ、ということで、お眼鏡にかなったという事なのかなあと思います。

 

6.時が熟した

 こんだけ書いてきたけど、実はこれだけは声を大にして言いたい(笑)。アメリカがK-popアイドルを受け入れる機運が、ようやく整ってきたということを。

 2000年代半ばころからRain先輩などがアメリカに進出し始めて、そしてこれまで数多くのK-popグループが後を追って海外進出しました。そして、2012年にはPSY先輩のカンナム・スタイルがブームを巻き起こしました。KconというK-popコンベンションも2012年から3年連続でアメリカで開催されました。確かに、国を挙げての韓流作りが実を結んだとも言えなくはないですが、K-pop関連事務所と所属アーティストたちの地道な努力なしでは、ここまで広がりはみせなかったと思います。

 K-popが浸透して、K-popファン層が分厚くなってきたからこそ、BTSにも目が向けられた。つまり、BTSBillboardチャート7位も、AMAでのパフォーマンスも(あくまで招待歌手という位置づけであったとしても)、BTSの実力だけでは決して実現できなかったと私は思うのです。先輩方によるこの10年の地盤作りがあったればこそだということを、BTSには決して忘れては欲しくないと思います(なぜか上から目線)。

 

 それにしてもBTSは、AMAではどんなパフォーマンスを見せてくれるのでしょうか。アメリカのファンがrealityやauthenticに惹かれるということが分かっていたら、やるべきことは自ずと見えてくるような気がしませんか(偉そう)。私はぜひ、彼ら自身の黒目黒髪で出演して頂きたいです(まあ、色染めとカラコンも、K-popアイドルの立派なカルチャーなので、それもいいのでしょうが)。 

 そして、絶対に・・・いやきっと・・・たぶん・・・口パクはしないでしょう。あのステージで口パクが許されるのは、Britneyちゃんくらいです(笑)。(彼女は昔、「どうしてか分からないけど、踊りながら歌うのがどうしてもできない」と言っていました。)

 

 以上勝手気ままに綴ってきましたが、AMAでのステージパフォーマンスが本当に楽しみですし、心から応援したいです。BTSの真骨頂である熱量のあふれ出たパフォーマンスで、世界の観客の度肝を抜いてほしいです。